お知らせ
2021年12月21日
お知らせ
【献体事務室便り】つまづいたおかげで・・・

師走の早朝、大学近くの地元物産館の店頭には、色鮮やかなシクラメンやガーベラ、愛らしいスミレやパンジーなどが次々と並べられていきます。手際の良い店員さんの颯爽とした立ち振る舞い、冷気に包まれしも凜と咲く美しい可憐な花々に見送られての出勤に我が身の倖せをひしひしと感じる朝のひとときです。

今年も国内外で不穏なことが続いた一年でしたね。それでも、前を向き、少しずつ新しい生活様式を受け入れてきた自分たちにエールを送りたい年の瀬です。

本学の解剖学実習においてもコロナ禍を見据えて、今年は新たな一歩を踏み出しました。その一歩が解剖学実習室拡張工事です。これまで一学年全員が同時に行っていた実習を、密を回避するために昨年度は学生を半分ずつ実習に参加させ、そして我々は同じ実習を二回繰り返す事で対処しました。そのため、学生諸君の実習時間総数が減ってしまうという事態が起こり、今年は実習の時間確保のために、学生全員が一斉に実習を受けられるように施設改善を大学当局に掛け合いました。

これまで倉庫室として使用していた部屋に新たにダクトや換気口を設け、実習室に改修することを提案し、総工費は一千万円見積もりました。しかし、一方では数年後には、新校舎の着工計画もあり、予算と改修内容の調整に関係者は頭を悩ませました。

工事を請負う業者の方々と何度も話し合い、無理難題を承知しながらも、実習開講時までに何とか完成させなければという思いが先立ち・・・なかなか結論が出ない話し合いの中で、突然、工事責任者の方から、『部屋を改修するのではなく、別の部屋との入れ替え』を行う案が出されました。
実習室に隣接する学生の更衣室を実習室に拡張するその発想に、ガーンと頭を打たれた感じがしました。『目から鱗』とはこのことです。

考えてみれば、ずっとその方が合理的で現実的、そして実現性を帯びています・・・それからはこれまでの懸念材料であったものが一気に消え、トントン拍子に改修工事計画が進み、工事費用も二百万円余で済みました。この案件により、一つの事柄に固執し過ぎていた自分に反省すると共に、こうしたたくさんの学外の方にもお力を戴いて居ることをまた再確認しました。

さて、私は沖縄県宮古島の伊良部大橋、来間大橋、池閒大橋に始まり、角島大橋(山口県)、九重夢大吊橋(大分県)を自分の足で歩いて渡りました。いずれも全国でも有数の長さと景観の美しさを誇る橋です。
ご存知の方は少ないと思いますが、この中でも平成十八年に完成した『九重“夢”大吊橋』は筑後川源流域にある鳴子川渓谷の標高七七七㍍、長さ三九〇㍍、 高さ一七三㍍の歩道専用として『日本一の高さ』を誇る吊橋です。すぐ目前に『日本の滝百選』にも選ばれた『震動の滝・雄滝』や『雌滝』を望み、足下に筑後川の源流域を流れる鳴子川渓谷の原生林が広がり、 四季折々に織りなす大自然の変化は訪れる人々を魅了してやみません。

また遠くに、三俣山や涌蓋山など雄大な『くじゅう連山』が横たわり、三六〇度の大パノラマはまさに『天空の散歩道』にふさわしい絶景です。その吊り橋の袂に小さな古びた看板を見つけ、書かれた文字を追い、ハッとしました。すでに人生の辛苦を超越されたみなさまには失礼かと思いますが、私の心にストンと入ってきた文字をここに記させて戴きます。

つまづいたおかげで

つまづいたり転んだりしたおかげで
物事を深く考えるようになりました

あやまちや失敗をくりかえしたおかげで
すこしずつだが人のやることを
暖かい目で見られるようになりました

何回も何回も追いつめられたおかげで
人間としての弱さとだらしなさを                                             いやというほど知りました

だまされたりうらぎられたりしたおかげで
馬鹿正直で親切な人間の
暖かさも知りました
そして・・・身近な人の死にあうたびに
人の命とはかなさと、今ここに生きていることの
尊さを骨身にしみて味わいました

人の命の尊さを骨身にしみてあじわったおかげで
人の命をほんとうにたいせつにする本物の
人間に裸であうことができました

ひとりの本物の人間にめぐりあえたおかげで
それが縁となり次々にたくさんの良い人達に
めぐりあうことができました
   
だから私のまわりにいる人達はみんな
良い人達ばかりなんです

今年の実習室改修工事では『つまづいたおかげで』関係者の方々にたくさんのお力を拝借し、知恵を授けて戴きました。
また本学の献体運動を支えてくださる会員のみなさま、後方支援をしてくださるご家族様や支援者様からも励ましや慈愛に満ちた優しいお心をたくさん頂戴致しました。まさに『献体運動を支えてくださる人達はみんな良い人達ばかりなのです』と胸を張って言えることが嬉しい年の瀬です。

今宵も夕刻の大山一帯の空には鮮烈な色に燃える冬茜が広がっています。この美しい光景に重ねてみなさまにおかれましても、新たな年にたくさんの良き人たち・出来事に巡り会えますよう祈っております・・・

令和三年 仲冬

東海大学医学部献体事務室
遠藤京子 記


北原白秋の『あいうえおのうた』を同封致しました。大きな声で読み上げて戴き、一日をお元気でお過ごしください。
メッセージカードの風景は朝日の開聞岳、真夏の石垣島、角島大橋、秋の金時山から臨む壮大な富士山の四景を用意致しました。どれがお手元に届くかは分かりませんが、全国の風景をお楽しみください。

また四十七都道府県巡り紙面ツアーの開催に大変お時間を要しておりますことをお詫び申し上げます。新春よりスタートする予定です。ご期待くださいませ。

献体のお申し込み・お問合せは
こちらからお願いいたします
電話 0463-93-1121 0463-93-1121
 (内2500)
平日9:00-17:00
TOPへ