お知らせ
2020年12月18日
お知らせ
【献体事務室便り】『神業清掃チーム』に重ねて

厳冬の早朝のテレビから流れてきた『神業清掃チーム』というアナウンサーの声・・・

聞き慣れぬ言葉に何のことやらと画面に目を向けると、年末年始の東海道新幹線の利用者を分散させ、  密を回避するために列車運行を一時間当たり二本増便させるというニュース。しかし、それを実現するには『速やかな発車』と言うハードルがあり、その課題解決には折り返しの車内清掃の時間短縮が大きな鍵となるために清掃作業を二分間短縮し、十分間で車内清掃に加えて除菌対策と車内空気の入れ替えまでを行っている列車清掃職人の奮闘ぶりが『神業清掃チーム』として紹介されていました。
その様子はまさに、両方の手足をフルに使い、胡蝶のごとく全身が舞うような躍動力はまるでオリンピック選手さながらの光景に写りました。その光景はこの夏の無人島での体験を彷彿させました。

長崎県の五島列島にある旧野首教会を訪れた時のことです。                    教会のある五島列島は、九州最西端、長崎県の西方約百㎞に位置し、大小およそ百四十余りの島々からなる西海国立公園の中にあります。

二〇一八年六月に『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』として世界文化遺産に登録されました。その歴史は江戸時代まで遡り、当時キリスト教を信仰していた人々が、徳川幕府によって迫害を受けた際に、この五島まで、危険な船旅を潜り抜け、離島へと移り住むことで信仰を隠し通し、仲間と共に集落を形成した所です。
篤き信仰のために命懸けの難航をくぐり抜け、この島にやってきたキリシタンたちの軌跡と独特の文化が育まれた五島のキリシタン文化の地をぜひ、自分の目で見たいとの思いに魅せられ、長崎本土からバスや船をいくつも乗り継ぎ、 丸一日を掛けて辿り着いた場所は、野崎島(長崎県北松浦郡小値賀町)という 無人島で、ここに世界遺産になった旧野首教会があります。

移住してきた十七世帯のキリスト信者たちは、この地での教会建立のために生活費を少しでも安く上げるために寝食を共にするといった共同生活、その上に一日二食の質素な食事をすることで、後生、世界遺産となる旧野首教会の建設資金をたった三年余りで調達したという話しは今も色褪せることなく次世代に、そして世界に向けて引き継がれています。

この時の建設費用は当時の金額にして三千円(現在の約三億円)を、引き渡しの当日に一円の不足もなく設計建築を手がけた鉄川与助技師に支払われたことは驚異でもあります。しかし、この野崎島も最盛期には約六百五十人いた島民も、高度経済成長期になると島民が減少し、 一九七六年に残っていた野首地区のカトリック信徒六世帯三十一人が島を去り、無人島となり、教会は荒れ果てていましたが、一九八九年に長崎県指定有形文化財に指定され、町によって修復されました。そして今、無人島のこの島に煉瓦造りの聖堂教会が世界遺産として凜とそびえ立っています。

禁教の中、島の中で息を潜め、敬虔な信仰を守り伝えたキリシタンたちの生活と東京駅での『神業清掃チーム』 それぞれ場所も時代背景も違いますが、目の前にある課題や宿命を引き受け、粛々とこなしていくことの気高さが冬空にそして私の胸の中にどこまでも清々しく広がります。

また、今年はマスクに覆われ追われた一年ではありましたが、献体事務室に届いた会員のみなさまからの お便りには、コロナ禍に対する不平不満は一つもなく、それどころかこの状況下を逞しく楽しく生きる生活の術が散りばめられた宝石箱を見たような気がしました。

さて、ご報告が遅れましたが、懸念していた今年度の解剖学実習が無事開講されました。コロナ感染対策のために春学期は、学生諸君の大学への立ち入りが禁止され、授業は遠隔授業となり、学内のほとんどの行事が見送られてしまいました。しかし、医学部におきましては、後期の実習関係の授業においては対面で行っています。
まだまだ、以前のような環境で学生諸君が学内を闊歩出来る状況ではありませんが、感染防止対策を嵩じながら授業や学生のキャンパスライフが少しずつ再開されつつあります。特に解剖学実習開講に当たっては、蜜を回避するため、学年を二分し、実習時の人数を半分にして行い、解剖学教室スタッフの労力は二倍になるものの、貴重な機会を戴きましたみなさまのご期待に応えるべく、最後まで滞りなく実習が行えるよう、教室員一丸となってその対策に嵩じております。

新しい年のスタートは静かなステイホームが呼びかけられています。
禁教の中、島々のそこかしこで息を潜め、長年の苦難を耐え抜き敬虔な『信仰』が守り伝えられたように、今、私達も静かな時空を心掛け、 みなさまのもとに一日も早い解放感と喜びに溢れた日が再来しますよう心より願っております。どうそ心穏やかに新しい年を迎えられますように・・・

令和二年 聖家族の日

東海大学医学部献体事務室
遠藤京子 記


今年度は慰霊祭が中止となりましたが、解剖学実習開講時にご登壇戴いた会員様からのメッセージを同封させて戴きました。

また、メッセージカードの風景は広島県鞆の浦、鹿児島県指宿の西大山駅から見える開聞岳、五島列島小値賀島からの夕景、沖縄県宮古島市の宮古ブルーを用意致しました。どれがお手元に届くかは分かりませんが、全国の風景をお楽しみくださいませ。

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