お知らせ
2014年12月10日
お知らせ
【献体事務室便り】受けた恩を次世代へ恩送り

師走月まであとわずかという晩秋の日本最南西端の沖縄本島・・・そぼ降る雨は汗ばむ身体に心地よく浸透し、亜熱帯特有のなまあたたかい風が時折、吹き抜けていきます。

小高い丘陵からは南国独特の風景が拡がり、ゆったりとした時間が流れている幻想的な光景…ここに次世代へ託された夢と希望が『献体者の碑』となり、八百十四名の方々のお名前が刻まれていました。

この秋、献体実務担当者研修会が沖縄県で開催され、帰りの飛行機までの時間を利用して、那覇市内から路線バスを乗り継いで一時間余りのところにある琉球大学医学部キャンパスまで足を伸ばしてみました。
国立大学最後の新設医学部として昭和五十四年に開設され、沖縄県の医療の中核の機能を担う場所を一目見ておきたいと思ったのです。

ご存知のように沖縄県は明治時代まで、日清両属の琉球王国であったため、他の都道府県とは異なる文化・習俗が根付いており、その上、家族一族の強い結びつきと共に葬送の儀式には独特の文化が育まれています。そのため、解剖学実習で必要とするご献体が成立することが難しく、新設医科大学の中では、特に苦難を強いられた大学でした。
それゆえに、平成八年までは、都内の医科大学の篤志家の方々が琉球大学医学部の友好会員となり、琉球大学の医学教育をお手伝いしてきたという経緯があります。そんな状況を沖縄県民の方々の中から『遠方からこんなに力を寄せてもらっているのに、人に委ねているだけで吾々が何もしないわけにはいかない』という機運が高まり、また時を同じくして、この献体者の碑が建立されると急速に献体登録希望者が増加し、琉球大学医学部でも平成十八年より篤志家の方のみで解剖学実習が行われるようになったとのことです。

私が訪ねたその日、おりしも、そこに一人の女性が静かに祈りを捧げておられました。
祈りが終わると穏やかな安らいだお顔でこちらに歩いてこられる彼女に勇気を持って話しかけてみました。するとはにかみの中に人懐こい優しい笑顔で、一語一語、ゆっくりと丁寧におばあ様が反対する家族を押し切って、この琉球大学医学部に献体をされたこと。

そして時折、こうして碑の前で祈りを捧げていることを話してくださいました。

『祖母は私たち家族の誇りです』・・・

『日常の節目に、こうしてここで祖母の名前に向かって話しをしに来るのです。時には私の子供たちも来ます』

おばあ様の夢と希望がこうしてご家族の礎になっている・・・何とも嬉しい話ですね。
彼女の笑顔と当時のご家族の苦渋を思い浮かべ目頭が熱くなりました。
本学も数年後に医学部棟の建て替え工事が始まる予定です。その際には、この琉球大学の慰霊碑のように何かの形で篤志家の方々の夢と希望を刻みたいと考えています。

今年も篤志家のみなさまにたくさんの声援と応援を頂きました。ご協力ありがとうございました。
末筆になりましたが、東海大学医学部献体担当チームは新たな目標を掲げ『受けた恩を次世代に恩送り』して参りたいと思います。
来る年も変わらぬご支援を宜しくお願い致します。

二〇一四年 暮節

東海大学医学部献体事務室
遠藤京子 記

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電話 0463-93-1121 0463-93-1121
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