お知らせ
2013年12月4日
お知らせ
【献体事務室便り】千年にも通ずる献体運動

山の稜線が赤く染まり、裾野に広がる家々の明かりがひとつふたつと灯る幻想的な師走の夕刻
ここ望星台は北風を寄せつけないような暖かい空気に包まれています。
今年も皆様から素敵なお話や嬉しい出来事をたくさん寄せて頂きました。
その一部をご紹介させていただきます。

慰霊祭翌日、参列してくださった会員様やご遺族様から歓びや感謝のお声が複数届きました。
「ご満足して頂け良かった!」心満ち足りた1日が終わろうとしていた夕刻、また電話が鳴り始めました。「東海大学献体受付です」しかし、電話の向こうからは何の応答もありません。

「あれ?間違い電話?でも繋がっている・・・」受話器をしばらく耳にあてたままにしていると、電話の向こう側から途切れ途切れに嗚咽のようなものが聞こえてきます。
「聞き違いかしら?」しかし間違いなく嗚咽交じりの泣き声です。一抹の不安が交差しながらじっと耳を澄ませていると、小さいけれどはっきりした声で「遠藤さん ごめんなさい・・・」「えっ・・・もしかしたら、巷で言う振り込め詐欺?」しかし次の瞬間「私はあなたに謝りたくて・・・慰霊祭での東海大学のみなさんの献身的な姿に私は思わず手を合わせてしました。本当にゴメンなさい。」何が起きたのかわからず、次の言葉を待っていると「私はKの娘です。母のことであなたに当たったり、良からぬ事を言って困らせたり、今思うと本当に恥ずかしいです。でも昨日の大学の皆さんの様子を拝見していたら、申し訳ないことをしてしまったと・・・一晩中寝付けませんでした。皆さんの姿を見ていたら泣けて泣けて・・・」 今春、お母様がご献体されたご家族様からのお電話でした。半世紀にも及ぶ母親への葛藤、慰霊祭にご参列なされた事でお二人の関係が、少しずつ溶解し始めたのでしょう・・・

この一本のお電話から私たちは改めて、真摯に取り込む姿勢がどんな言葉よりも人を動かす力になるのだということを学びました。 

嬉しい話は重なります。数日後、同じく慰霊祭に参列された会員様から一報が入りました。
慰霊祭会場で会員様の隣に着席した二年生のM君、ご遺族代表のお言葉に号泣し、会員様がそっと寄り添ってくださったとのこと。医学部の二年生は解剖学実習を皮切りに、膨大な学習量と次から次へと難題の試験が絶え間なく行われます。憧れの医学部に入学し、血の滲むような努力しているにも関わらず、不本意な結果に自分には医者は不向きかもしれないと考え始め、医学部を辞めようと決心した矢先のご遺族様からのメッセージ・・・その言葉に一本の大きな道筋を貰い、進むべき方向を照らしてくださったこと。

これまでの苦しい胸のうちを隣り合わせた会員様に打ち明け「これを乗り越えたらきっと良いお医者様になられますよ」と背中をそっと押して頂いたM君、ご遺族様会員様による見事なリレーで、医学生に冬の寒空へ飛び出す勇気を与えてくださったことを心より感謝申し上げます。

そして最後に本学での献体業務の話を加えさせて頂きます。
時代の流れと共に、全国の医科歯科大学では献体運動が転換期を迎えています。解剖学実習のために制定された『献体法』を今後は臨床研修や研究のためにもという方向で動き始めました。『献体を用いてのご遺族様の同意による臨床研修と研究』は先月の広島での研修会でもその賛否が問われ、本学ではどういう方向で進めていくのかということを話し合いました。

後日、坂部教授からこんなメールが届きました。
「おはようございます。昨日はありがとうございました。良い機会だと思い、あれから論理性や
一貫性も含めて、今回の件を機会に今後の方針を考えてみました。

 一 本人の生前同意が最も重要という観点
 二 ご遺族様よりも生前の本人同意を最も尊重するという観点

ご本人の生前の意思を最重要視することで、『学部学生の医学教育のみ』という目的の単純化・・・東海大学ではその基本方針で行きましょう」と結ばれていました。

もちろんこれからの本学の取り組みとして「献体同意書」の再構築それに合わせた草案作りを推し進めていかなければなりません。 近い将来には体制を整えた上で会員の皆様にも先のような同意を取り直さなければならない時期が訪れる事と思います。

その節は是非、ご協力をお願いしたいと思います。
師走とは言え、爽やかな風が本学の献体運動に吹き抜けています。
会員のみなさまどうぞ、ご安心頂き、好奇心溢れる新しい年を迎えてくださいませ。

初夏、訪れたフランスのアルザス地方は百年の間に何度も領地争いのためフランスとドイツを行ったり来たりしました。それでも小さな美しい村の伝統を守り抜き、いまもなお、その地での暮らしを大切にしている文化に触れる事ができました。
本学でも千年通ずるような『献体運動』を揺るぎない信念で推し進めて参りたいと思います。
来る年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

二〇一三年  暮来月
東海大学医学部献体担当 遠藤京子 記

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電話 0463-93-1121 0463-93-1121
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